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クラクラするし、腹立たしい。
だからと言って、怒鳴る元気は無い。
「桝屋云うたら、薪炭商の事か?」」
「………そう。
薪炭……?
………思い出した!」
そこで言葉を切った私は、山崎の耳元で声を潜めた。
「桝屋。
筑前藩御用達商人の桝屋喜右衛門。
それは表向きで、裏では長州や肥後、土佐の浪人に援助してんの。
本当の名は、長州藩士・古高俊太郎。
あー、スッキリした。」
山崎の言葉が私の記憶の引き出しを開けてくれた。
一つのヒントが私の記憶を目覚めさせ、スルスルと頭に浮かぶ言葉達を言い切ると、何だか胸の支えが取れたみたいに晴々とした気分。
清々しささえ感じる。
山崎はと言えば、呆れた様に私を見て溜息を吐き出す。
「そこまで解ってんやったら、何を調べるつもりなんや?」
「調べる事は山ほどあるの。」
「これから何が起こるんや?
長州の浪人を援助するゆう話は、腐るほどある。
せやのに、何で桝屋に拘るんや?」
またも土方もどきもビックリするであろう眉間の皺を携えた山崎。
その下にある双眼は、鋭く研ぎ澄まされギラリと光っている。
早く言えと言わんばかりに。
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