4183人が本棚に入れています
本棚に追加
暗くいつも通りの朝だった。
「……ヤバッ!早く道場に行かなきゃ!
じぃちゃんに怒鳴られちゃうよ…。」
妙に引っ掛かるリアルな夢を無理矢理頭から引き離し、急いで胴着に袖を通し袴を履いた。
腰より少し長い髪の毛を高い位置でポニーテールにすると、バタバタと足音を鳴らし急いで家の階段を駆け下りた。
そのままの勢いで玄関を飛び出し、敷地内にある道場へ足を踏み入れた途端――
「悠希!
お前は意識が足りぬ!
武道家たる者、弛んでいてはならぬ!」
(また説教が始まったよ。)
仁王立ちの祖父の前に、仕方なく素直に正座し、うんざりしながら説教に耳を傾けた。
「常に武道家であると意識し、己に恥じぬ行動を心掛けねばならぬ!
それから―――」
(じぃちゃんの説教長いんだよね。
そう言えば、刀の鞘を払えって夢の中で言われたような?
鞘を払ったらどうなるんだっけ?
刀ってどれよ?
道場に三本飾ってあるし、他にも数本あるんですけど――)
「――悠希!聞いておるのか!?
意識は足りん、上の空ではご先祖様に示しがつかん!」
(ご先祖様・・・?
あっ!刀ってご先祖様の刀かも!)
.
最初のコメントを投稿しよう!