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(ご先祖様の刀って、確か鞘から抜けないって話を聞いた様な?
じゃぁ、他の刀?
いやいや、他の刀の鞘なら払った事あるし!
ってか、朝から夢に翻弄されてる私って…頭イカレてない?
ってか、そもそも刀の鞘を払ったからってどうなるの?って話よね。
居合い切りでもしろと?
そんな馬鹿な話があるかって!)
「悠希!いい加減にしろ!
返事はどうした!?
人の話を聞けぬ者が、立派な武道家にはなれん!」
鬼の形相で睨み付ける祖父をこれ以上怒らせると厄介な事になると知っている私は素直に頭を下げる事を選んだ。
「申し訳ありませんでした!
以後気をつけますので何卒ご勘弁下さい!」
頭を下げ、道場一杯に広がる大声で言い切れば、たちまち祖父の機嫌が直る。
筈だった――
「悠希!
お前は何時もそう言っておきながら、守った試しがないではないか!」
(何度も同じ手は通用しないか…。)
頭を切り替え、私は凛とした表情を作り、お腹の底から声を出した。
「申し訳ありません。
武道家として恥ずべき行為でした。
心を入れ替え、精進致します。」
ガバッと頭を勢い良く下げ、道場の床に擦りつけた。
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