プロローグ

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「何? こっちじろじろ見ないでよ」  持っていた少年誌を腹の上に乗せて、ジト目のカノンが俺に言葉を突き刺す。 考えている人のことをつい無意識に見てしまうのは仕方がないことであって、その裏に下心だとかがあるわけでは何もない。 「見てないって」  俺らの日常なんていつも同じことの堂々巡りに過ぎなかった。 朝起きて飯食って学校へ行く。 帰ってきてだらだらして飯食って寝る。 休日でさえ代わり映えのないライフスタイルの俺たちに、今更なんやかんや言ってくる輩なんて誰一人いない。 それは、言っても仕方がないことだし、そもそも言ってくれるような人間が身の回りに存在しないのだから。 今日は木曜日で、昨日の五時間目の宿題をカノンにやらせようと必死になっていたところなのだが、カノンは毎度の   「風雅がやってよ」 の一点張り。 流石に俺も、精神的にも肉体的にも疲労が溜まってくるわけであって、そろそろ必要だなって薄々思い始めていた……。   カノンの意識改革を――
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