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「もう、今すぐに止めて下さいよ」
「今セーブしてるの。藍、私は短気は嫌いなのよ?」
そう呟くと、紫様はPSPの電源を落として隙間の中に仕舞った。
「全く…。人の物を勝手に盗んできて使うなんて、まるで何処かの魔女のようですね紫様」
呆れたように私は言ったが、「盗んだんじゃなくってよ?少しの間お借りするだけですわ」と答えた。紫様は少し遠慮を覚えた方がいいと思う。
「本当に、外の世界ではゲームに熱中し過ぎて廃人になる人間もいるらしいですからね…」
「あら、幻想郷にも一人いるじゃない」
「あれは姫ですから。とにかく紫様はもっとしっかりとして貰わないと………」
ガラガラガラーッ
そこまで言いかけて、私は言葉を止めた。間違いない、と心の中で呟くと、明るい陽光の射す廊下を玄関へと全力疾走した。
「らんしゃま~!!」
私を呼ぶ声が、玄関から聞こえて来ていた。その姿を、可愛らしいショートカットの髪を、大きな猫の耳を、その愛くるしい表情を思い浮かべるだけでにやけ顔が止まらない。
「私だけ」の〈橙(ちぇん)〉が、天使のような声で私を呼んでいる………ッ!
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