第1章:プロローグ

3/9
前へ
/37ページ
次へ
「もう、今すぐに止めて下さいよ」 「今セーブしてるの。藍、私は短気は嫌いなのよ?」 そう呟くと、紫様はPSPの電源を落として隙間の中に仕舞った。 「全く…。人の物を勝手に盗んできて使うなんて、まるで何処かの魔女のようですね紫様」 呆れたように私は言ったが、「盗んだんじゃなくってよ?少しの間お借りするだけですわ」と答えた。紫様は少し遠慮を覚えた方がいいと思う。 「本当に、外の世界ではゲームに熱中し過ぎて廃人になる人間もいるらしいですからね…」 「あら、幻想郷にも一人いるじゃない」 「あれは姫ですから。とにかく紫様はもっとしっかりとして貰わないと………」 ガラガラガラーッ そこまで言いかけて、私は言葉を止めた。間違いない、と心の中で呟くと、明るい陽光の射す廊下を玄関へと全力疾走した。 「らんしゃま~!!」 私を呼ぶ声が、玄関から聞こえて来ていた。その姿を、可愛らしいショートカットの髪を、大きな猫の耳を、その愛くるしい表情を思い浮かべるだけでにやけ顔が止まらない。 「私だけ」の〈橙(ちぇん)〉が、天使のような声で私を呼んでいる………ッ!
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加