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屯所に帰った私と土方さんに、一緒に上洛してきたお役人様が「上手くいきましたかな。」と声を掛けて下さった。
私と土方さんはその時初めて、清河の行動を見かねたお役人様たちが会津藩に予め掛け合って下さっていたのだと気付いた。
私が礼を言うと、お役人様はにこにこして「礼には及ばないよ」と言った。
「もし君たちが行動してくれなかったら私たちは会津藩に嘘の報告をしたことになる。そうなれば私どもも職を失うさ。」
「まぁ君たちなら絶対にやるだろうと確信してたんだけどね」と笑っておられた。
私と土方さんは深々と頭を下げた。
会津藩や容保様だけではない。
自分の身を賭けて他人のために行動してくださる上司が幕府にはまだまだ沢山居た。
将軍様の為ではない。
将軍様を想って、この国の行く末を想って、しかし足元を見ることを忘れない人達。
そんな人達に、そんな人達の志に剣を握る。
そう心に決めたのは、恐らく私だけではない。
結局、お役人様の「京に残り会津藩お預かりとして京で力を尽くす者は居らぬか。」という呼びかけに応じた11人を含んだ24人の所帯で京に残ることとなった。
壬生の八木邸、前川邸に“壬生浪士隊 屯所”と表札を掲げ、その晩は前川邸の広間に全員詰め込み、わいわいと祝い酒を呑んだ。
私は体質的に(若干年齢的に)あまり呑めないので酔わなかったが、殆ど皆が泥酔してその場で寝ていた。
お酒嫌いな土方さんですらこの時ばかりは呑みまくっておられた程だった。
酔っていないのは私と沖田さん、あと11人の中の1人の斉藤一さんくらいだったので、皆を運ぶよりも布団でも掛けてここでそのまま寝て貰うことにした。
「っふふ、全く、土方さんもサンナンさんも、いつまでもこういう面があるから恨めないよね。」
「沖田さんって、本当は試衛館の皆さんのこと一人残らず大好きなんじゃないんですか?」
「あれ?気付いちゃった?あ、僕、悠ちゃんのことも好きだよ?」
「それでも皆さんへの“大好き”には、遠く及びませんよね。」
そういって笑うと、沖田さんは優しく息を吐いた。
「ホント、悠ちゃんみたいな女の子は初めて見るよ。あの剣術にそれだけの観察力があるなら、少々力が足りなくても心配無さそうだね。」
そう言って笑う沖田さんと、それからしばらく話していた。
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