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私が初めて皆と会ったのは文久3年の2月4日。
私も彼らも幕府の浪士募集を聞き集まった三百人を越える中の数人、まだ名も響かぬ剣士だった。
私たちは幕府が対尊攘激派用として募った浪士隊として、上洛した。
最も、実を言うと私は会津藩御用達の町医者の家の次女で、医学を少々嗜んでおり、武士ではない。
が、私が女にも関わらず、幼少から小野派一刀流の道場に通い詰めたり(最終的にはなんとか免許皆伝を得たり)、掃除の途中に箒を槍に見立て振り回すもんで、両親が私を女に産んで後悔している、と言っていた頃に、この浪士募集の話を場内で聞いたらしい。
「よく怪我してうちに来る知り合いの浪士たちも数人行くようだから、お前男装して紛れて来たらどうだ。医者なら居て困ることもないだろう。」
と、半ば強引に参加させられたのだ。
とはいえ、私は好奇心から意外にも乗り気で参加していた。
(男装が意外にも上手く出来る事にも気づき更に乗り気だった。)
長くて半年ほどの旅だと思って出発したのが、まさか動乱の真っ只中を駆け抜けることになるとは、
私も、後に背中を預けて共に戦うことになる彼らも、想像すらしていなかった。
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