上洛

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「免許皆伝…?貴方が?…小野派一刀流の?」 そう尋ねたのは山南さんだった。 私は周りの免許皆伝には劣ると自負していたので、恐る恐る頷くことしか出来なかった。 「免許皆伝?可愛いのになかなかやるんだね。うわぁ、戦ってみたいなぁ。ね、土方さん、どっかで戦えないかな?」 「バカやろう!遊びに来たんじゃねぇんだぞ、総司!…にしても、免許皆伝…か…。」 驚いていたのは山南さんだけではなく、土方さんや永倉さん、原田さんも同じようだった。 「でも小野派一刀流っつったら、技が速くなかった?悠は小柄なんだし、一番向いてる剣術なんじゃねぇ?」 「まぁ…そうか。平助の言うことも一利あるか。…そうだな、すげえよ!かかか!」 「本当、まだ若いんだろ?」 「今年18になりました。」 原田さんにそう答えると、西組長の顔色が変わったのに気付いた。 が、試衛館の人達はこれでもかというくらい笑い出した。 「っぷくくく…ぶあっはっははは!何だ、俺より若ぇのかよ!」 「本当、平助より若いとは思わなかったなぁ。ほらやっぱり土方さん、一度戦っとくべきですって。」 「駄目だつってんだろ総司!」 「ぶあっはっはっは!それにしてもすげぇわ、まだ18かよ!」 「左之お前、なんかしでかしたら18の免許皆伝が居るんだからな、命ねぇぞ?かかか!」 「そうですね、千代くんを敵には回せないようです。っふふふ。」 「…や、山南さんまで…。そんなの皆様だって同じじゃないですか。…っふふ。」 それから私は試衛館の面々と様々な話をした。 少々医学を嗜んでいて、武家の生まれではないことを話すと、土方さんがたくさん話して下さるようになった。 土方さんは元々薬売りをやっていたから、どこか親近感が湧いたのだろう、と、後から山南さんがこっそり教えてくれた。 そして私たちは、ついに京へ足を踏み入れることになる。
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