消えた灯火

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 満員の外野スタンドの一角で小さな手を震わせながらひたすら戦況を見つめる少女が一人。その掌には、不器用な文字で「希望」と刺繍されたお守りが握られていた。  バッターボックスの早乙女も後ろポケットに忍ばせたそれも又「必勝」と書かれたお守りを強く握り締める。  目を瞑り一つ息をつくと右手に持ったバットをしゃんと相手ピッチャーに向ける。今一度、左脚に重心を乗せてバットを上段に構えると、後は主審の合図を待つ。  しかし、プレイの宣告を遮るように相手ベンチからゆっくりと監督が出てきた。 「タイム!!」  主審は監督から告げられた選手名を聞くと驚いたようにその名前を聞き返す。しばらくしてブルペンから出てきたのは、もう一つの「影」であった。
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