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「っつ……。」
ベシャッと情けない音を立てて床に放り出される。
イケメン君に抱き込まれたままだったせいで、ろくに受け身もとれずに腰をしたたかに打った。
その上イケメン君は俺の上に被さったままぐったりしている。
重いわ痛いわ動きにくいわで散々だ。
この恨みを込めてイケメン君を一発殴っても、俺に罪はあるだろうか?いや、あるはずがない。
よし、後で腹に一発くれてやろう。
という訳で自由に動かせる右手を使って、バシバシと容赦なくイケメン君の頬を叩く。
頬が赤く腫れ上がりそうな勢いだが知ったことか。
「おい、少年。起きろ。」
「ぅん……ねーちゃん、だからそういう乱暴な起こし方は良くないっていつ……も……っ!?」
しっかりと意識を取り戻したらしいイケメン君は、俺を押し倒したような状態になってることに気付いたらしく、真っ赤になって飛び退いた。
「うわあああ!すっすみません!」
どうやら未だに俺が男だと気づいていないらしい。
あれだけ密着していたのだから気付いても良さそうなものだが、というか気付け。
俺の男としてのなけなしのプライドやら何やらが粉々になりそうだ。
「少年、」
「はっはい!」
「さっきの答えだが……」
居住まいを正したイケメン君がごくり、と唾を飲む。
ここで返答するのは余りにも場違いだが、誤解を解くのは早い方がいい。
ついでに周り(・・)の誤解も解けるだろう、一石二鳥だ。
「残念ながら俺は男だ。」
しぃん、と辺りが静まり返る。
少年が、俺の感触でも思い出しているのか、俺と自分の手を交互に見る。
そして、漸くその事実が飲み込めたのか、叫んだ。
何故か、やり取りを見守っていた外野(・・)と一緒に。
『お、男おおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?』
絹を裂くような、というには余りにも野太すぎる悲鳴が部屋全体にこだまする。
余りの五月蝿さにビリビリと部屋が揺れるように感じたぐらいだ。
茫然自失のイケメン君を、多少居たたまれない気分になりながら見やる。
そこにこほん、と咳払いをする者が一人。
「あの、お取り込み中すみません。少し宜しいですか?」
声の主は、これまたテンプレな感じの、クレリックのような白い法衣っぽいものを着ている金髪美女だった。
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