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商店街から裏道に入った一角に古びたビルがある。
一階は年中シャッターが下りていて、二階は胡散臭い貸金業のオフィス、三階は私もよくは知らないけれどマッサージ(?)の店らしい。
各階ワンフロアしかない小さなビル、その地下一階を借りて私は店舗を構えている。
表向きはちょっと変わった雑貨店。
恋愛成就のブレスや運勢アップのネックレス、お香やアロマグッズ…魔除けから呪術に使う小物まで取り揃えてある。
「あの小娘…小物だが、悪魔のニオイがするぜ」
レジ台の上に座っている黒い仔猫が小声で私に話しかける。
その視線は5分ほど前に来店した一人の女子高生に向けられている。
彼女はヒーリングCDのコーナーで立ち止まったままだ。
「ニオイ?そうなの?
まぁ、もう少し様子を見ようよ」
メンズ雑誌を見ながらメフィ(名前が長いので、そう呼ぶことにした)に私は言った。
この黒い仔猫は私を「騙した」あの悪魔、メフィストフェレスだ。
メフィ曰く、この姿の方が地上では楽らしい。
確かに小憎らしい人型よりは愛着があっていいと思う。
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