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うんうんと唸っている俺に圭はふう、と息をつくと、顔を合わせてきた。
「…まあ、何かの間違いだってのはすぐ分かりましたけど。」
「っじゃあ、那津にそう言ってくれりゃよかったじゃねぇか!!」
「何を言えって言うんですか。
『聖悟を信じて。彼はそんなことする人じゃないです』?
俺は、そこまで聖悟のこと知ってるわけでもなければ、信用もしてないんですけど。」
ぐさぐさ。
…い、痛い。
圭の言葉の棘と冷ややかな視線がつき刺さる。
あれ、俺、こいつの友達だったよな?
何この圧迫感。
少し気分がオチかけていると、
圭はコホンと咳払いをし、
とにかく、と言葉を始めた。
「…弁解する相手は俺じゃないでしょう。」
「…ん、ああ、うん。
そうだな。また言うことが増えた。」
―むしろ言いたいこと、聞きたいことがあり過ぎて、
果たしてまとめ切れるのか、疑問だ。
…でも、とにかく。
会って話さないと始まらない。
静かに腰を上げた俺に、圭は微笑みを返した。
「ま、頑張ってください。あちらも案外気にしていないかもしれないですし、ね。」
……や、それはそれで、傷つくが。
「…ありがとな、圭。」
彼の最後のセリフに苦笑を洩らしながら
俺は部屋を後にした。
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