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――
エレベータに乗って階を上がり、俺は自宅の扉を開ける。
見なれた部屋の中心を陣取ると、深く息をついた。
「はぁ――」
なんかもう、
結局標的は見つからなかったり、
それどころか余計な誤解を生んでたりと散々だ。
―しかし、未央や圭によって収穫はあった。
目撃情報もあったし、不透明だった彼女の思いも少し見えて来た。
…やはり、会って話す必要がある、とも。
「…まぁ、悩んでても仕方ないか。」
基本は行動派な俺。
考えるのは後回しにしてやる。
決意も新たに、とりあえず目を覚まそうと洗面所に行った。
蛇口を回し、勢いよく顔を水に浸す。
バシャッと音をたて、水が跳ねた。
髪にまで滴る冷たい雫が心地よい。いい具合に俺の頭を冷やしてくれた。
…アイツのバイト、いつまでだろう。
何時くらいだろうか、帰ってくるのは。
まあ、那津の家に押し掛けてやるのは決定している。(え)
もう、いい。
どんな話が来ようが、
ここまで来たら今日、一気に全部問い質してやる。
「絶対、逃がさねぇ………」
顔を上げると、ギラギラとした瞳の男が鏡に映った。
END
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