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あれ、と思ったときにはもう後ろから男の両腕が絡まっていた。
ぎゅっと背後から抱きすくめられて、椅子に体を縫いつけられる。
―やっと来たか。
「…聖悟。」
「ごめん、待ったか?」
首を回して後ろを向くと、
予想通り、噂の種の国崎 聖悟本人が笑顔で私を覗きこんでいた。
「っ!!?」
「…え……っ!!?」
女子共は声にもならないくらい驚いている様子。
口をぽかーんと開けた驚愕の表情は…なんていうか、見るにも堪えない。
……顔と相談するのは君らの方じゃないかなあ。
そう頭の片隅でちらりと考えたがしかし、それは私の気にするところに非ず。
私は首を元に戻し、正面を向いたまま聖悟に話しかけた。
「…聖悟、遅い。」
「ん、悪い。教授に呼び出されてさ。それより何?この人だかり。」
「ぜーんぶ君のファンだよー。」
「…またか?というか、まだ居たのか?」
「どうも、私と君が付き合ってるのが信じられないらしい。」
「へぇ。」
そこで、聖悟は初めて周囲の女子に目を向けた。
目が合った女子はユデダコのように顔を真っ赤に染め、慌てて目線を逸らす。
「あのさぁ、」
だが、聖悟も、私同様に女子らのことは気に留めてないようで。
気の抜けたような声を出し、おもむろに私を指さして、言った。
「こいつ、俺の彼女で間違ってないけど。」
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