つきあいました。①

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「―――!!?」 ちゅっと、リップ音を立てて離れる聖悟の唇。 私は呆然とヤツの顔を見つめたまま、固まるばかりだった。 ―え、なに、これ。 何が起こった……っ!? 「……こんなんで、どうよ。」 聖悟はニヤリと笑みを作り、ぺろっと舌で自分の唇をなめた。 同時に、私はやっと何をされたかを理解し、頬を真っ赤に染め上げる。 ――こいつは、いま、公衆の面前で……!? 「っせ……「っきゃあーーっ!!」 ―しかし抗議しようと口に出しかけた私の声は、その『公衆』に無残にもかき消された。 …そう、私と同じくヤツの暴挙に呆けていた女子の大群に。 聖悟は奇声を発したまま固まった女子を面白そうに一瞥し、 またも彼女らに追い打ちをかけた。 「ん、こういうことだから。俺たち、超ラブラブなの。」 「…っ!?」 言うと同時に、私の体が宙に浮く。 さっきまで座っていた椅子が下方に見えた。 ――見る間に、男は私を抱えあげたのだ。 「っ、降ろせ!!」 ……もちろん私もたまったもんじゃない。 中途半端な浮遊感が気持ち悪いし。小さい子を抱っこするような無様な格好が、嫌だ。 ―てか何してんの、君っ! 「あー、那津はコッチのが良かったっけ。」 足をじたばたとさせていると、 両脇に添えられていた手はすぐさま、背中とひざ裏に回った。 体が固定され、バランスが安定する。 ハイ、これでお姫様だっこの完成…… て、違う!!そうじゃない!! 「聖悟っ!人の話……「じゃ、そう噂広めていてくれる? あとこいつには手、ださないようにね。」 ニッコリと嘘臭く笑い、周囲を見回す聖悟。 …うわ、やっぱり私完全スルーされてる。 自分に都合のいいことしか聞かないつもりだ。 付き合ってからも、その辺全然変わんねぇええ!! 「じゃあ、俺ら帰るから。」 そして、 私と私の荷物を抱えた聖悟は、颯爽とその場をフェードアウトしたのだった。 .
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