つきあいました。①

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――― ―― 「コノヤロッ、いい加減、離せえぇええ!!」 「何で?歩かなくていいから楽だろ?」 ちがっ…… そういう意味じゃねぇ! 分かってて言ってるだろ君っ! 「人の視線が!視線が痛いんだってば!」 「んなもん、無視しとけ。」 「やだ無理!つか、君はなんでそう平然としてるんだ!」 ギャーギャーと、ごく近い距離にある、聖悟の耳元で叫ぶ私。 しかし、がっしりと固定されている身体はまったく動かなかった。 …そう、私は未だお姫様だっこの体勢のまま、どこかに連れられている状況。 しかも、彼が解放してくれるそぶりは皆無だ。 ――なんだ、このある場面を彷彿(ホウフツ)とさせるような状況はっ!! 今は追われてるわけでも何でもないのに! というか、 さっきといい今といい……何でこいつはこんな恥ずかしいことを人前でできるんだぁあああ!! 興奮と羞恥で顔を赤く染める私を彼はチラリと一瞥し、ぼそっと呟く。 「……分かったから、静かにしろ。」 「分かったんなら降ろしてよっ!」 「はいはい、もうちょっとだから我慢しとけって。」 ゴソゴソ…… ガチャッ 「どうぞ、お姫サマ。」 ポスン。 「……へ?」 ぽかん、と口を開ける私。 『もうちょっと』は思ったよりも早かった。 気がつけば、私は駐車場に停めていた彼の車の助手席に降ろされていた。 .
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