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びっくりした私とヤツの目が、あった。
―私を否応なしに動けなくさせる強い眼差し。
今回も例外ではなく、私はカチンと固まってしまった。
「那津………」
甘い声を含ませながら、聖悟の顔が近付く。
びくっと体を震わせてしまう私。
思わず目を閉じると、額に柔らかな感触が降ってきた。
そして、短いソレが離されると、三日月の形に歪んだ彼の唇から言葉が紡ぎだされる。
「…愛してる。」
「……っ」
耳元に残る甘い吐息が私をおかしくする。
赤い、暑い、熱い。
もう、完全にノックアウト、だ。
ふしゅーっと、全身の力が抜けた私は軟体動物のように、くたりと男の肩にもたれかかった。
それを聖悟は片腕だけで支え、運転を続行する。
「可愛いなぁ、那津は。」
「…も、そんな、ことばっか言うから……っ!」
心臓が、持たねぇ。
ドキドキバクバク、今日も活発な私の左胸は『慣れる』ということなんて知らず。
―どんどん、堕ちる。
「じゃ、行くか。」
「………」
―もはや、何も言える状況じゃない私。
半ば諦めの気持ちで嘆息し、素直に腕の温もりに身をまかせ、外をながめた。
車は、恋人たちを乗せ、快調に走った。
END
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