雨夜

5/21
前へ
/73ページ
次へ
何故なら男は忍びと呼ばれる者だったから。 まだ使い走りをするくらいだったが、おようも同じだ。 男は貧しい農民の格好をして傘を被っている。 おようも似た様な身なりだ。 傘の下で男の眼が光っている。 おようは少し不安になって口を開いた。 「土蜘蛛。」 「その名で呼ぶんじゃねぇよ。」 土蜘蛛と呼ばれた男が少し笑いを含んだ声で言った。 「兄ちゃんと呼べと言ったろうが。」 「いっ嫌だよっ。」 思わず声を上げた、おようの口を土蜘蛛は素早く手で塞いだ。 おようは目を見開き静止した。 自分達以外の気配を近くに感じたのだ。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加