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走る。
走る。走る。
自分の荒い息遣い、胸を突き破りそうな鼓動。
追っ手の気配を背中に感じながら、前を行く土蜘蛛の姿だけを見て走った。
いつでも使える様に手にはくないを握りしめている。
森を抜け更に山に分け入り、何処を走っているかも判別はつかない。
木々の葉や小枝が体にあたる。
おようの頬を鋭い枝先が傷つけた。
緊張のせいか痛みは感じなかった。
(ここは…何処なんだろう…。)
おようも土蜘蛛の下で修行をした身だ。
自分達の里の周りは把握しているはずなのだが、今居る場所が解らない。
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