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「ていうか、私は一瞬で分かったけど……本当に美鈴ちゃんなの?」
「はい?そうですよ?」
そりゃあ、驚くよな。
俺達家族が出ていくまで、美鈴は俺からしたら頼りがいがあるお姉ちゃん、姉貴からしたら、礼儀正しくて気が利く、実の弟より可愛い妹みたいな存在だっただろうに。
でもそんな美鈴でも、どこか抜けている所があった。
真面目過ぎるというか……やる気が空回り、みたいな事が多く、まだ子供らしかった。
そんな美鈴が、知らない間に自分より良い女になってたんじゃあ、姉貴のプライドも
「あんた何か言った?」
「存じ上げません」
「……まぁいいわ。ていうか、私美鈴ちゃんに身長追い抜かれちゃったわね」
「あんまり大きいっていうのも、考え物ですけど」
「いやー、いいでしょ。今はそこの馬鹿みたいに大きい男の子も増えてるし、調度いいくらいじゃない?」
姉貴はそう言うと、少し首を傾げた。
「でも、今日はどうしたの?こっち来て初日だし、何もおもてなしできないんだよね……」
「いや、構わないですよ。荷物運びの手伝いに来ただけですから」
「えっ?そんな、悪いわ……」
申し訳なさそうにそう呟く姉貴。
どうしてだろう。
副音声で姉貴の笑い声が聞こえた気がしたのは、ただの幻聴なのかな。
「美鈴ちゃんも忙しいでしょ?」
「いえ。特にこれといった事は今は無いし……圭亮と奈美さんに会えただけで、手伝いのお礼は貰ったようなものですから」
「んー、可愛いっ!」
突然美鈴に抱き着く姉貴。
そして美鈴の頬にスリスリと自分の頬を当て始める。
美鈴も嫌がればいいのに……と思いながら美鈴の表情を伺ってみると、何故か顔を赤くしていた。
「な、奈美さん……」
「もうお姉ちゃんって呼んでも良いわよ?真面目に」
何なんだよこの差は。
俺なんて触るなとか言われるんだぞ?いや、決して触れたいとかそういう気持ちは無いんだけどさ。
ちょっと肩が当たっただけで『ぶっ殺す』だぞ?
「やめろよ姉貴。美鈴嫌がってんだろ」
「はぁ……柔らかい頬っぺたね。やっぱり良いわぁ、美鈴ちゃんみたいな妹」
なんか危ない発言をしながら美鈴から離れる姉貴。
俺も頬の柔らかさには自信があるが、言ってもシカトされそうなのでやめておいた。
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