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「じゃあ……少しゆっくりしてからでいいから、美鈴ちゃんはこの馬鹿の手伝いをしてくれる?こいつ自分の荷物が1番多いのに逃げ出して……」
「そうだったのか?圭亮」
「え?いや、俺はこの麗しいお姉様のためにこうやってジュースを……」
俺は道に迷った末やっとの思いで手に入れたジュースの入った袋を見せ付けた。
姉貴は鼻で笑うと、俺の手から袋ごとジュースを奪い取った。
「はい、美鈴ちゃんの分」
ちょっと待てぇぇええ!
「ありがとうございます」
あ……受け取るんだ。
「じゃ、あんたの荷物はこっからあそこのやつね。美鈴ちゃんに重い荷物運ばせて怪我でもさせたら、あんた童貞のまま死ぬ事になるから」
「わかって……誰が童貞だ!」
「あらあら……じゃ、美鈴ちゃんよろしくね」
「はい」
ニヤニヤと笑いながら、玄関入ってすぐにある自分の部屋へと入っていく姉貴。
「ふふっ……奈美さんは相変わらず、弟を虐めるのが好きみたいだな」
姉貴がいなくなると、こちらも楽しそうに笑っている美鈴。
「……美鈴も相変わらず、俺が虐められてるのを見てるのが好きみたいだね」
「うん。久しぶりに見れたが……やっぱり可愛いな」
「どこがだよ……」
血が繋がってると、少しくらい可愛くても何とも思わないもんなんだよな。
「君が、だぞ?」
「え?尚更どこがだよ」
虐められてる俺を見て、可愛いなって……美鈴ってドSだったんだな。
「ほら」
俺の周りにはドSばっかだな……とか思っていると、美鈴はジュースを一口飲んで俺に返してきた。
「自分のだったんだろう?私はいいから、飲んでくれ」
「あ、ありがと……」
何故……一口飲んだ。
童貞の俺の反応を見て、また可愛いなとか思っているんだろうか。
「よし。じゃあ早速やるか?」
「美鈴が俺よりやる気なのはどうかと思うけど……頑張りましょうか」
さすがに客人に自分より仕事をさせるほど、俺も非常識な男じゃない。
まぁ、再会したばかりの客人に荷物運びをさせる時点で、そんなこと言える立場じゃないけれど。
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