再開の味

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「さぁ、私が運んでいいのはどの荷物なんだ?」 「え?あぁ、軽いのはこの辺のやつかな」 「そういう意味じゃなくて……」 少し口ごもる美鈴。 「圭亮ももう年頃だ。嫌らしい本の一つや二つ、この中に入っているんだろう?」 「……ちょっとタンマ」 「あ……ごめん」 「いや、謝るとかじゃ……」 「DVDだったな」 「そっち!?」 待て……結構、美鈴のキャラが昔と変わっきているのかもしれない。 あんまりそういう事は言わない奴だったと記憶してるんだけど……あまり当てにならないみたいだ。 「入ってないよ!」 「そうか、捨てた?」 「うん、まずは俺がエロチックな本を持っているという前提をぶち壊したい所なんだ」 「え?出来るのか?」 「何だよその無駄な自信!?」 どういう事だ。 俺が何故こんなにもつっこまないといけない? 「とまぁ、9割本気の冗談は置いといて」 つっこんだら負けだ。 俺がそう簡単に“何でやねーん”なんて言うと思ったら間違いだぞ美鈴。 「む……つっこまないのか?」 「つっこみません」 「せっかく私のテンションが上がって、普段言わないような事まで言ってるんだぞ?」 やっぱりか……。 ていうか、良く見ると美鈴の顔は少し紅潮しているようだった。 あれだけの下ネタで恥ずかしがるという事は、やっぱり美鈴はそっち系は疎いみたいだ。 「恥ずかしいなら言わなきゃいいのに」 「だから、テンションが上がってたんだ。久しぶりに圭亮に会ってな」 「それは嬉しいけどさ」 今の台詞こそ少しは恥ずかしがって言うべきだと思うんだけどな。 「それより、私はどういう反応をしていいか分からないから結構本気で聞いたんだが……嫌らしい本は無いんだな?」 「無いっつーの……」 引っ越しの一週間程前に、荷物に混じって親や姉貴に見られたくない一心で泣く泣く捨てたのはまた別の話だ。 今持ってないのは、紛れも無い真実なのだから(カッコイイ言い方ではぐらかす俺の図)。 「よし、じゃあ運ぼう」 靴を脱ぎ、家に上がる美鈴。 元気良く段ボールを持ち上げたが……。 「……っ!?」
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