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美鈴が持ち上げたのは積み上げられている中で一番小さい段ボール。
俺が一言注意すべきだったのだろうが、すっかり忘れてしまっていた。
恐らく一番小さい段ボールが一番軽いという先入観が、美鈴に小さな油断を生んだんだろう。
まぁ簡単に言うと、美鈴が持ち上げた段ボールの中にはダンベルとか、俺が筋トレに使う重たい物一式が詰め込まれていた。
女の子の美鈴に何の心構えも無く持てるような重さじゃない事くらい、俺だって分かってる。
だから美鈴が後ろに倒れ込んだ時、俺も素早くその後ろに回り込む事が出来た。
「おぉう……美鈴重たくなった?」
「む……うぅ」
美鈴の腰と背中に腕を回し、何とか受け止める。
ジェントルマンの俺は、間違っても変な所に触れないように気を効かせながら。
変な所ってのは……おっぱいとか、おっぱいとか、おっぱいとか。
「不甲斐無い……」
「何言ってんの。俺こそ何も言ってなくてゴメン」
腕に一層力を込め、美鈴を立たせる。
美鈴は不甲斐無いという言葉通り、少し申し訳なさそうな顔をしていた。
俺からすると、そんな重い段ボールを軽々持ち上げて『え?こんな重さで筋トレしてるの?』みたいな顔をされる方が嫌なんだけど。
「ほら、貸して」
俺は美鈴から強引気味に段ボールを受けとった。
一秒でも長くこんな物を女性に持たせるのは俺の中の紳士精神に反する。
それに危なっかしいと言うより、美鈴が心配だから任せられない。
「すまないな……まさかそんなに入ってるとは思わなかったんだ」
「へ?何が入ってるのか分かってたの?」
だったら無理しなきゃいいのに。
わざわざ重い物から運ぼうとするなんて、美鈴は良い奴だ。
「うん、今私から無理矢理奪い取った感じからして、確信した。その段ボールの中にはHなDVDが」
「紳士精神が裏目にっ!?ていうかそのネタはもういいよ!」
「その重さからして……総数79本って所か?」
「リアルっぽい数字を言うな!俺の中で美鈴のキャラがおかしくなってるから!」
「ふむ。気持ちいいツッコミだ」
いやふむじゃねぇよ。
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