再開の味

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ていうか、俺は美鈴が良く分からなくなってきた。 昔はただ真面目で純粋な人だと思っていたが、どうやらおふざけというものを覚えたようだ。 そっちの方が俺も楽しいと思うから、別に何の不満も無いけれど。 「美鈴変わったね……」 「えっ……そ、そうか?」 何故か驚いた様子の美鈴。 自分の変化には、やっぱり自分じゃ気づかないもんなのかな。 「それは悪い意味……か?」 「へ?あぁ、良い意味だよ。何か明るくなったって感じかな」 「そうか……良かった。……ん?じゃあ、昔の私は暗かったのか?」 痛い所をついてくる美鈴。 「そういう訳じゃないけど、何て言うか……昔の美鈴は真面目過ぎて、冗談とかあんまり言わなかっただろ?」 「まぁ……人並みよりは」 「昔は良く俺がボケて美鈴がつっこんでたのに、何か俺さっきからつっこんでばっかだなぁってさ」 本当に……こんなにボケかます子になっちゃってまぁ。嬉しいんだか悲しいんだか。 複雑な気分だ。 俺ももっとボケたい年頃なのに。 「あんまり意識した事無いが……圭亮はもっとふざけたいのか?」 「いや、深い意味は無いよ。ただ何となく言ってみただけだし」 「そうか。じゃあ私は今のままで良いんだな?」 「美鈴は美鈴のままが一番美鈴らしいよ」 「……何か良い事言ってるみたいな感じだけど、当たり前の事じゃないか?」 「まぁね」 これ以上しゃべり続けると荷物運びが長引いてしまうので、俺は会話も切り上げて美鈴から受けとった段ボールを持って2階に上がった。 そろそろ俺も自分の新しい部屋を見てみたい。 引っ越しは2度目だけど、自分の部屋とか結構気になるもんなんだよな。 「美鈴は軽いのでいいからね?」 「ん……大丈夫」 2階に上がり、廊下を少し歩いた所で振り返ると、美鈴はもう少し大きかったら顔が見えなくなるくらいの大きさの段ボールを持っていた。 ……何でそう無理するかな。 「えっと……ここか」 俺は二つある部屋のドアの内の一つを器用に足で開け、中に入った。 予想よりも断然と広い部屋で、ベッドや机、本棚やテーブルを置いても充分なスペースがある。 ちょっとテンションが上がった。 「む……随分と広い部屋だな。少し羨ましい」 遅れて入ってきた美鈴も、軽い感嘆の言葉を放つ。
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