再開の味

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しかし結局その後も段ボールを運ぶ度に中身を美鈴に見られたり、何か面白い物がないか漁られたり、結構散々な目にあった。 と言っても美鈴は信用できる人だから、物を壊されるとかっていう心配はないけれど。 だけど誰にでも見られたくない物があるように、俺にだって見られたくない物が少なからずある。 恥ずかしい自作ポエムなんかじゃない。ていうかそんな物書いてない。 昔のアルバムとか、普通だけど俺にとって見られたくない物なんてそんなところだ。 そしてそういう物は美鈴に見つからないように俺が運び、荷物を整理し始めて約一時間。 いろいろと談笑しながら整理をしていると、一階から俺を呼ぶ姉貴の声が聞こえてきた。 荷物を勝手に弄らないように美鈴に念を押し、俺は部屋を出て階段を降りた。 「なに?」 「母さんと父さんの帰りは少し遅くなるってさ。出前取るから、美鈴ちゃんに夕ご飯食べてくか聞いてくれる?」 「出前……」 引っ越し初日に子供を置いて何処行ってんだよ家の両親は……。 「分かった」 「あ、出前取るからとか言わないのよ?あの子律儀だから、お金の事言い出すと思うし。さりげなく聞きなさいよ」 「おっけー」 適当に返事をし、2階の部屋へと戻る。 姉貴も言っているように、美鈴は律儀な人だ。恩や借りという言葉には非常に敏感だし、もっぱら返したがる……人だったと思う。 さっきからの会話で中身は昔とあんまり変わってなかったし、多分今もそうなんだろう。 「美鈴?」 「ん?」 「姉貴が夕飯食ってけってさ。味は一応保障するよ」 出前だしな。 「いや、いい。圭亮の家族も、引っ越し初日で疲れてるだろうし余計な気はあんまり使わせたくないしな……」 「その家族がいないの。姉貴以外」 「え?あぁ、そういえば私の両親も夕方くらいから出かけるって言ってたな。もしかしたら、圭亮の両親と一緒に出かけてるのかもしれない」 美鈴が言うように、俺の家族と美鈴の家族は仲が良い。 俺が美鈴と初めて会ったのも、母さんに着いていって美鈴の家に行った時だったし。 「そう。で、どうする?どうせ姉貴と二人きりだし、俺からすると美鈴がいたほうが良いんだけど」 「そうだな……奈美さんに聞いて、お邪魔じゃなかったらお言葉に甘えさせてもらうとする」
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