再開の味

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「ふふっ……」 ニコリと、笑いかけてくる女の子。 耳より少し上の高さで後ろに纏められている黒髪のポニーテールが軽く揺れる。 年上だろうか? キッチリと揃っている眉、柔らかそうな白い肌、少し大きめの綺麗な瞳。 大人っぽい雰囲気を纏っているのに、170近くある女性にしては高めの身長から俺を見上げてくるその顔はまだどこかあどけなかった。 「久しぶりだな」 「え……?」 女の子は微笑みを崩さずに、一言だけそう言った。 腰辺りまで伸びているポニーテールが、風に靡いてまた揺れる。 「……分からないか?」 俺が呆気に取られて反応しないでいると、女の子は少しだけ寂しげな顔を見せた。 分かるのか分からないかと言われれば……まったく分からない。 待てよ……こんなに可愛い女の子なら、俺も男として忘れない自信はある。 だが引っ越す以前にこんな子がいた覚えも、一緒に遊んだような記憶も勿論無い。 俺の脳みそはこの年で腐り始めているみたいだったが、忘れたと率直に言う訳にもいかない。 俺は少しだけ考える素振りをした後、随分と遅れた返事をした。 「ごめん……えっと、名前ど忘れしちゃって」 おし、完璧。 これで女の子をむやみに傷つける事も……。 と思えたのも、一瞬だけだった。 俺の言葉を聞いた後、あからさまに悲しんでいる顔をする女の子。 どうやら名前をど忘れしただけでも、この子にとってはショックだったらしい。 「いや、このど忘れっていうのはほんの一時的な物なんだよ!?ほら、ここはどこ?私は誰?みたいな……」 「それは記憶喪失レベルじゃないのか?」 「う……」 言葉に詰まる俺。 くそ……ボキャブラリーの乏しさをこんな所で実感する事になるなんて。 国語辞典で変な言葉しか引かなかった今までの俺が悪いのか? おかげでそっちの知識はチェリーのくせに豊富なんだけどな。 「もういい……何と言うか、圭亮らしいな」 あ、俺の名前知ってるんですね。 俺は覚えてないのに……何だか罪悪感が湧いてくる。 「美鈴(みすず)」 「へ?」 「だから、名前。金子美鈴だよ」 美鈴……? ゴールデンチャイルド、ビューティフルベル?
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