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「お帰り」
「え……あ、うん。ただいま?」
ぎこちない再開の挨拶。
2年という月日は決して短くないが、どうやら美鈴は俺の知ってる美鈴のままのようだった。
「何で疑問形なんだ?」
「だっていきなりだし。ていうか……俺美鈴に帰ってくる事言ってたっけ」
美鈴とは、引っ越した後も大体月一くらいでメールのやり取りをしていた。
内容も別に近況報告みたいなもので、美鈴の文面は2年間変わらずいつも俺を心配したようなものばかりだった。
だから俺は美鈴が成長してる事も考えず、ショートカットでもっと低身長の美鈴を想像していた。
だから美鈴の変わりぶりに驚いた訳だ。
「私のお母さんと君のお母さんの仲だぞ?何も言わない訳がないじゃないか」
「それもそうか……」
俺的にはびっくりサプライズを企画しちゃってたんだがな。
「それより、何で君は私に一言もそういう報告しなかったんだ!?私が知ったのは三日前だぞ!?」
「い、いや……俺はサプライズ的な何かを用意しようかと」
「サプライズ!?私を忘れてたくせにか!」
「そ、それは美鈴が成長するから悪いんだろ!」
うわぁー。
すごく理不尽だね、俺。
「ふん……。どうせサプライズを用意してたとしても、私が分からなくて逆に圭亮が驚いてたんじゃないのか?」
「多分そうだよ!」
「威張る所じゃないぞ!?」
ジュースを持った手を振りながら主張する俺。
そのジュースを見て引っ越し荷物を運ばなければいけない事を思い出し、俺は少しテンションが下がりながらも美鈴にその事を伝える事にした。
「あのさ美鈴。再会したばっかりで何だけど、俺引っ越し荷物運ばないといけないんだよね」
「む……いきなり話題を変えてきたな。まぁいい。それなら、私も手伝おう」
「えっ?マジ?」
「そのためにこうやって訪ねてきたんだ」
腰に手をあて、私を敬いたまえとでも言いたげな顔をする美鈴。
女神が降臨しなさった。
「でも結構重いよ?」
「私も力になら少しは自信がある方だぞ?」
そう言うと、美鈴は何故か俺の胸に向けて軽くシャドーボクシングをし始めた。
まったく脅威を感じないんだが……自信あるって、そんな細い腕で?
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