雪解け

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奥から妻の声がする。 「飲んでくるの?」 「あぁ」 「送って行かなくていいの?」 「あぁ、迎えに来てもらったから」 「誰? ミキさん?」 「へっ? あぁ そう」 女の勘は鋭い。言い当てられてしどろもどろになってしまった。 「フーン」 「じゃぁ 行ってくる 帰りも送ってもらうから」 「フーン」 3月に黙ってミキと夕食を食べに行ったことをまだ根に持っているようだ。 あの夜、二人に何かあったのではないか?そして、それから親密な関係になっているのではないか? そんな疑いを持っているようだった。 ついこの間の役員会の夜も妻が迎えに来たとき、僕とミキは仲良く並んで歩いているところを見られている。 浮気しているとでも思っているのだろうか? 僕としてもミキとの二人の間にやましいことなど無いのだから毅然とした態度をとればよいのだが、僕がミキに抱いている感情がコソコソとした態度をとらせていた。やましい気持ちが何処かにあるのだ。 それなのに何の反省も無くミキに送り迎えをさせているのは妻への当て付けでもあったのかもしれない。 どことなく妻とのそんな駆け引きを楽しんでいた。 やきもちを妬いてくれるだけましか…
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