雪解け

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「お待たせ よろしくね」 「どうぞ」 初めて乗ったミキの車。 初めて女の子の部屋に招き入れられた感覚を覚えた。 最近よく見かける大衆車だが覚えやすいナンバーとフロントガラスの中央、バックミラーの助手席寄りにぶら下がる白いフワフワの毛玉が3つ連なったアクセサリーが街中でスライドした時の目印になっていた。 「へー これ羊だったんだ 綿毛の塊だと思ってた」 「なんですと?」 掃除の行き届いた清潔感のある車内。運転席と助手席の間のコンソールボックスには膝掛け代わりに使うらしいミッキーマウスのバスタオルが綺麗に折り畳まれて置いてある。 後部座席には何時も持ち歩いている肩掛けバッグが一つだけ置かれ、シートカバーが掛けられている訳でもなく質素な感じすらした。 デジタルのインパネのせいか運転席もすっきりしていて飾り気の無い車内がミキそのものを表現しているようだった。 「嫁さんに ミキに送り迎えしてもらうの?って言い当てられちゃってしどろもどろになっちゃった」 「なんでしどろもどろになるの?」 「実は3月にデートした後一悶着あって…」 「えー!! なんですと~! 私と行ったこと知らなかったの?」 「はい…」
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