赭(あか)

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赭(あか)

 涙は穏やかに  笑みへと移る  一筋の生糸(きいと)の波    記憶の中身は  いつでも真っ赤  見つからないように  今      笑顔は健(すこ)やかに  声すら紡(つむ)ぐ  一筋の生糸の先    僕を愛してくれた人が  記した文字は  アヤとりの如く       絡まさぬよう   胸で解いてみた   大事な   わらべ唄に載せて     後腐れのない   順序だての要らない   遥かな ストーリー      俄(にわか)に 葉ざくら  俄に 溷がわ  鳥は啼き  山、萌ゆる    分け隔てのない時代は  病み 見失い  やがて    アトを追う───            言葉は鮮やかに        心をふさぐ      一筋の生糸の舞          僕に効く薬       そっと手渡し     名前も名乗らずに           消え          どこかの場所を      求めて羽ばたく    未来と過去が重なり合う        その ほんの僅か      微々たる奇跡を       君なら なんと綴る           時は 草モミヂ     列(つら)らく 氷柱         犬は哭き         空、霞み    地平線のない荒野は溶け          力尽き          やがて           道を洗う             俄に 葉ざくら        俄に 溷がわ         鳥は 啼き        山、萌ゆる   区別の付かない季節が富み       諍(あらが)い          始祖に        赭を落とす
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