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ドートアギト
父が存命の時の夫婦の会話から推察すると、そもそもの原因――母親、ティファの異端恐怖症ともいうべきものを作った原因は、どうやらラインハルトの兄の方にあったらしい。もっとも、ラインハルトはティファと再婚した夫との間の子だったから、兄といっても半分だけ血の繋がった異父兄だ。ラインハルトとは十四歳年が離れていて、名前はドートアギトといった。
ドートアギトはあらゆる面においてラインハルトとは真逆の子供だった。幼い頃から賢く聡明で、歩き始めるのも喋り始めるのも他の子供より早かった。リーダーの素質もあったようで、近所の子供の頭領のような存在だった。当然その両親はできのよい息子を授かったことを喜んだ。
その思考が歪んで残虐であることに気づくまでのことだったが。
ある日、隣の家の鶏が、夜中の間に殺されていたことがあった。それは後にドートアギトの仕業であると判明したが、その時は結局猫に殺されたのだろうということになった。が、どうやって猫が錠前を開けたのか誰もが首を捻った。
その後も村全体で飼っていた猟犬や牛、果てには貴重な馬さえも死体で発見されるようになり、村中が騒然とした。そうした事件が起きる度、ドートアギトは気味が悪い程死体に興味を示したが、当時彼を犯人と疑うものは一人としていなかった。才人は違う、その一言で片付けて、彼らはより一層動物たちに注意するようになっただけだ。
しかし賢いといっても所詮は子供である。ついにある晩ドートアギトが村の子供をくびり殺している最中に捕まった。結束が強い村のことであった。子供や家畜を殺された村人は、長年の怒りをドートアギトとその両親に向けた。リンチに遭った一家を守るため父親は命を落とし、ティファは夫の遺言を守るため忌まわしい息子と共に村を捨てて逃げ去ったのである。
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