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一人で息子の枷になることに疲れ果てていたティファはその申し出を泣いて喜んだ。何かと優しくしてくれる隣人にいつしか愛情を感じながらも、連れ子として彼にドートアギトを押し付けることを考えるとどうしても想いを伝えることができなかったのだ。一方、マルケンの方も四十過ぎでありながら未だ独身を貫いており、この一年の間にか細くも優しく笑むこの未亡人を心から大切に思うようになっていた。一週間後、二人は町で簡素な結婚式を上げた。この時マルケンは四十二、ティファは三十。ドートアギトは十一歳であった。
――さて、当然のことながらここで家庭状況は一変する。それまでは異常な性癖以外では母を悩ませたことがなかったドートアギトだったが、新しく父親ができてことでそれは変わった。彼としても一応実の親くらいには情があったらしい。彼はマルケンを決して義父と認めようとはせず、その情のために事ある毎に夫に歯向かう彼に、ティファの脆い神経は更に擦り減っていくことになる。そのことが更にマルケンの怒りを掻き立て、両者は互いに一歩も譲らず飽きることなく喧嘩を続けた。殴り合うこともしばしばだった。マルケンはドートアギトの憎しみに満ちた目に背筋を凍らせながらも、背後に妻を庇う日が続いた。
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