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会議中であるにも関わらず、ぼーっと遠くを見ているラインハルトと、彼がぼーっとしているために会議が進まず困り顔の王を見かねて、その場の者を代表してマフィンが彼に平手打ちを食らわせた。突然現実に引き戻された将軍はびくっと飛び上がる。
「いつっ!な、なんだいきなり」
瞬く彼にマフィンは白目を剥く。
「なんだじゃないだろう、なんだじゃ。ほら」
くいっと顎をしゃくられて、彼は主君を始めとする軍幹部らがきょとんと自分を見つめていることに漸く気づいた。
「あ――ご、ごめん」
「いえ……こっちの世界に戻ってきて頂けましたか?」
端麗な美貌の王に笑顔を向けられ、ラインハルトは顔から火が出る思いだった。
「は、はい。そりゃもう」
「それは何より。では、議題についてのあなたの意見、きかせて頂けますか?」
「ぎ――議題」
そういえば、今日の議題はなんだったろう。というか、何故把握していない、自分。
「あーっと……」
「おい、まさかそれさえも分かってないんじゃないだろうな?」
呆れた顔をするシスターに返す言葉もない。テーブルの向こうで王が溜め息をついた。
「今日はどうしたんですか、ラインハルト?あなたらしくありません」
「――リリアーヌ、ごめん」
「今日の議題――つまり、戦争を終えた後国をどうすればいいかですが、あなたはそれについてどう思います?」
きいてラインハルトはほっと胸を撫で下ろす。よかった。恐れていたような難しい問題ではなかった。そう思って彼は常々考えていたことを口にした。
「そりゃ、みんな笑顔になってることが一番でしょう」
……何故か、部屋の空気が凍りついた。
「……あ、あれ?」
「…………。あれ、じゃないだろこの福助!そのために何をするかだ!!」
再びシスターに怒鳴られて、彼が塩を振られた青菜のようにしぼんでいく姿から、残りの者はそっと目を外した。
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