悩み

4/6
前へ
/32ページ
次へ
 ……決して自分が嫌いなわけではないけれど。時々どうしても沈んでしまう。周りに引けを感じてしまう。彼の周りを取り囲む人々が、あまりに煌びやかに輝いているから。  シスターは著名な盗賊団の元団員で、ルスランからロストテクノロジーを大量に分捕ってきた英雄だ。マリアベルも、超一流の魔導師で、その癒しの才能で戦闘のみならず後援としても力を発揮している。王君の功績などもはや述べるだけ無駄だろう。 (では、俺は?)  グスタフのような経験も、ミラージュのような桁外れの戦闘力があるわけでもない。会議にいたって、他の者とは違ってまともな助言すらできやしない。云えるのはいつも当たり前なこと――普通な、平凡なことばかり。  苛立たしくて、腕を振り下ろして寝具を叩くと、それは大した抵抗もなく彼の形になる。それに彼の心は更に重みを増す。 (こんな上質なものにくるまれるだけの代償を――働きを、俺は――?)  答えが出ないまま、彼はいつしか眠りについていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加