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◇
ガンガン! ゴンゴン!
「開けろ友希ー!」
脱衣所の扉を乱暴に叩き、兄貴が吠えている。鍵が付いてて本当によかった。
「恥ずかしがんなよ。男同士じゃねーか!」
「男同士じゃねーよ!」
うちの兄は一旦決めるとしつこい。それでも扉を壊すという強行には流石に出ず、五分ほど粘った後に諦めてくれた。
扉の向こうから兄貴の気配が遠のいていく。それに従い風呂場に一人という自分の状況が怖くなってきた。洗面台の鏡が直視できない。我ながら情けない。
しかし、ここで風呂に入らず逃げ出そうものなら、本当に兄貴が無理矢理一緒に入りかねない。何より男が廃る。いや、もうとうの昔に廃ってるか。
ええい、どうにでもなれ!
脱ぎ捨てた服を洗濯機にぶち込み、浴室の戸に手をかける。これから一生風呂に入らない訳にはいかないんだ。いちいちビクビクしてたまるか! 僕は生まれ変わるんだ!
それは、新たな自分への第一歩。ビビリ克服のためにも、桜子さんに相応しい男になるためにも、僕は風呂如きで怖がったりしない! 燃え盛る魂を糧にして、力強く戸を開いた。
「ハロー」
神様がいた。
「ふおぉぉぉぉぉ!」
今日はよく叫ぶ僕。叫び声のレパートリーが尽きるのは時間の問題だ。って、そんなことはどうでもいい!
「何故貴様がここにいるッ!」
「神じゃからね」
「答えになってない!」
しかも全裸じゃないか! 何普通に人ん家の風呂に浸かってやがる!
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