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次の日の目覚めは驚くほど爽やかだった。
喉の痛みも、全身を苛んでいた倦怠感も、嘘のようになくなっている。
――あいつが、やってくれたんだろうか。
どうやらあのメモの意味を汲むくらいはできたようだ。
天使見習い、とか言っていた。
見習いレベルなら、学ぶものだとか、努力するものだとか、何かしらあるだろうと思う。
ちょっと考えればわかることだ。
安易に楽な道を選びとることが、どれだけ卑怯で、何ひとつ自分の為にならないのか。
もし俺に気圧されて言いなりになっただけ、とかなら幻滅だ。
一生見習いのままだろうな。さすがにそれはないと思うが。
俺の思いというか、信念というか、物事に対する姿勢があいつに伝わっていてくれたなら嬉しい。
しかしそれで幸福感を得られる俺じゃない。当然だ。
彼女の鈴は銀色のままだろう。
手早く朝食と支度を済ませて玄関を出る。
彼女がいた痕跡は、なにひとつ残されてやしなかった。
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