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そんなことを思いながら窓の外を眺めていたら、小声で先輩が呟く。
「……あれの中、見ちゃえば?」
あれ。
審査員が書いた、評価用紙。
俺の演奏のぶんは、封筒でもらったのを鞄にしまってある。
これは学校に持ち帰って、顧問の先生に渡す予定だったが……
「憧れの先生からのコメントでしょ?」
そう。
審査員それぞれから一言ずつ批評のコメントがあるはずなんだ。
あの先生が、俺の演奏を聴いて、書いたコメント――
でもうちの部活のルールでは、これは封筒ごと、中身は見ずに顧問に渡すことになっている。
見せない理由はいろいろあるらしいが、ぶっちゃけ途中でこっそり見たってばれやしない。
でも。
「見ません」
「ばれないよ。あたし、去年アンサンブルコンテストのときみんなで見ちゃったし。それとも見るのが怖いの?」
いたずらっぽくにやにやと笑う先輩。
たぶん自分も評価が見たいんだろう。
怖くはない。
プロの評価だ。俺に対する評価だ。
どんな辛辣なコメントが書いてあったとしても、自分の糧にできると思う。
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