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しかたなく受話器をとる。
案の定、相手は同じだった。
『いきなり切らないでください! ちょっと話をさせてくださいよ』
やや怒気を孕んだ声。
まともに喋れるなら最初から喋れ。
しかし、今の自分にとって、この女のキンキンした声は頭に響くだけの不快なものでしかない。
会話に生産性が無いから、なおのこと。
「うるさい。迷惑。帰れ」
『私もあなたとコンタクトがとれないと困るんです……お願いです、話を聞いて貰えませんか』
心底鬱陶しそうに言ったのが伝わったのか、胡散臭い自称天使はしおらしくなった。
「じゃあこのままで話せ。話だけなら聞いてやる。満足したら帰れ」
通話を切らないまま受話器を置きっぱなしにすれば、あとは勝手に喋って帰るだろう。
喋ったせいで、喉の痛みが酷くなる。
げほげほと咳込むが、それはさらに喉に刺激を与え、痛みがちりちりと残った。
『だ、だめですっ!』
受話器からかすかに聞こえた。
普通に耳にあてると頭に響いてしょうがない。
しかたなしに、電話をハンズフリーモードにする。
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