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「よかった……! ありがとうございます」
少女の言葉を耳に入れつつも、俺の顔はよそを向いていた。
玄関に置いてあるメモ帳とボールペンを掴み、あることを書く。
『俺は喋りたくない。大声は出すな。手短に済ませろ』
それだけ書いて押し付ける。
やや当惑したようだが、俺とメモを何度か交互に見ると、やがて察したらしい。
こくこくと頷いた。
電話ごしで話したときよりだいぶ落ち着いた声で、少女は話しだす。
「最初に言ったとおり、私は天使です。……見習いですけど」
ずいぶん頭が可哀相なやつらしい。
目線で先を促すと、やりづらそうに続けた。
「見習いから一人前になるための試験をしてるんです。えっと、これなんですが」
少女は、首にかかっていた細いチェーンのネックレスを引っ張って服から出すと、先端に付いているものを俺に見せてきた。
2センチほどの、銀の鈴。
カジュアルな服装に、その鈴はやけに子供っぽく浮いた。
「これは幸せの鈴なんです」
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