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「私が、あなたの願いを叶えて幸せにします。あなたが幸せになると、この鈴は金色に光ります。そうなれば合格なんです」
嘘臭い話だ。
見たところ、子供のおもちゃみたいな安っぽいただの鈴だ。
見ず知らずの奴の妄言に付き合わされて体力を消費している今の時間が勿体なくてしかたない。
「世界のことわりを乱さない範囲でなら、ひとつだけですけど願いを叶えられます。いえ、叶えさせてくださいっ!」
きぃん。
少女の思い詰めたような声が頭に響いた。
もう、早く解放されたくてしょうがない俺は、切実な願いを書いて渡した。
『風邪治して』
「えっ……風邪? そんなことでいいんですか? 宝くじで億当てるのだって、好きな人と付き合えるようにするのだって、なんでもできるんですよ?」
なんでもって言ったのに出来ないのかよ。
言いかけて、やめた。
『大事な大会がある。早く風邪を治したい』
本当になんでもできるなら、やってくれるはずだ。
しかしこいつは、信じられないことを口にしたんだ。
それも、あろうことか、嬉しそうに。
「じゃあ、その大会で優勝させてみせましょう! 私がどうかしなくたって寝てれば風邪は治るんです。だから今日は普通に寝てください」
……馬鹿か?
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