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「あなたが天園ヱデンくんでしょ?目立つから一発でわかったわ」
嬉しそうにバイザーを上げて、彼女はウィンクをする。
ヘルメット越しでもキリッとした綺麗な目鼻立ちをしているのがよく分かった。
「渋沢ハルカよ、あなたのお爺さまから言われたお出迎えの。」
すばやく手を取られて握手をさせられる、どうやらなかなか強引な女性のようだ。
「あ、よろしくおねがいします…」
1テンポ遅れたような感覚でヱデンもそれに応えた。
握った手をそのまま引っ張りながら、「それじゃ行きましょうか!時間が勿体無いものね!」
一番無駄にしていた人物が、コロコロと軽快な声色で歩いていった。
道の脇にはフルカウルの大型バイクが一台とめてあった。
そこに引っ掛けてあったもう一つのヘルメットを彼女はヱデンに投げてわたす。
「そんなに遠くじゃないけど、すこっし距離があるから振り落とされないでね。」
ヘルメットを被り、彼女の後ろにまたがらされ「しっかりつかまっといてね」とまたウィンクされる。
どうやらそれが彼女の癖のようだった。
「変な所つかんじゃダメよ?」とも言われたが、彼にはそういう感覚も欠如していた。
恋愛というものもよくわかっていないくらいだった。街をすり抜け、木立をこえながらバイクは走っていく。
フィィン…と独特のモーター音を響かせながら風を切って。
彼女と同じ様に軽快なカーブを描きながら、二人を乗せたバイクは山道をのぼっていった。
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