焦がれし者の円舞曲

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「すみません…」 風呂場の中。 全身ずぶ濡れの俺に、うなだれているカン君。しかも、全裸。 失恋しただけで済まないなんて、本当に、今日は一体何の厄日だ。 「気にすんな」 風呂場から出て、カン君に背を向けると、上を一気に脱ぎ捨て、洗濯機に突っ込んだ。 下も濡れて気持ち悪い。 後でまた、風呂に入るか。 上半身裸のまま、着替えを取りに部屋へ戻ろうとした背中から、いきなり抱き締められた。 「ちょっ」「速人さん、彼女、いるんですか?」 別人のような、醒めた声に戸惑うしかない。 「いないよ。ってか、急になんだ」 「じゃあ、これは何ですか」 カン君の指が伸び、俺の耳下を撫でる。 「これ、キスマークですよね」 心当たりは、ただ一つ。 「キスマークなんかじゃない。虫に刺されただけだ」 笑って誤魔化してしまおうとした。 「…試してみましょうか」 返事する前に、柔らかいモノが首筋に押し付けられ。 「止めろ!」 抵抗する間も無く、ちりっとした痛み。 ゆっくりと顔を上げたカン君は、眼を細め唇を当てた場所を見つめる。 「同じ跡だ」 グイッと引き寄せられたかと思うと、脱衣場の壁に押し付けられ、向き合う格好。 「ねぇ、誰です。誰にキスマークなんか付けさせたんです」 睨むような眼が血走っていた。

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