89人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が状況を理解する前に、藤ヶ谷は低い小さい声で(普段からは想像もできない声だ)耳元で、囁いた。
「我慢できなくなる、」
一言。それを言って自然と離れた体。
今までみんなの前じゃ何もしてこなかったのに、抱きついてくるなんて藤ヶ谷らしくない。
楽屋ではみんなそれぞれのことをしているといっても、おかしいと思わない訳がないのに。
それにこんな声。俺のが調子狂うっつーの。
「藤ヶ谷。ここ楽屋」
「俺、もう無理」
「は?」
何が無理なんだ。と問いかける前に、藤ヶ谷は俺の目をじっと見て、逸らしたと思えば、深呼吸をひとつ。 そしてまた、俺の目をじっと見つめる藤ヶ谷。
少し厚みのある唇から発せられたのは、とんでもないことだった。
最初のコメントを投稿しよう!