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苳村にある寺では千寿の娘の桜が一人、境内を掃除していた。
あの祠壊しから一夜明け、村には穏やかな空気が流れていた。
ザッ、
寺に敷き詰めてある白石が踏まれる音がした。その足音はこちらに向かってきていた。
桜は来客を迎えるため、慌てて外へ出た。
「すみません。あの、どちら様ですか?」
黒いパーカーを着て、フードをかぶった十歳ぐらいの男の子が立っていた。顔はフードに隠れて見えなかった。
ここいらで見かけない顔だったので、桜は少し警戒した。
「あの…寺に何の用ですか?」
「……………………」
男の子は沈黙したままで、何も答えない。
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