第二部 七話 夢ノ中デ

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「あれ? まだいたんだ」 雲羅はにこりと笑うと、静かに影となって、消えていった。 梔の香りが、薄ら香る。まるで、梔そのもののように。 長い間、千寿と桜はその場に佇んでいた。 「──また、始まるのか。怨の遠き園へと、人は迷いけり─」 「─はい。 それに何ぞ魍魎鬼神妨げをなし 非業の命を取らんとや…」 「百鬼夜行の群れが、いつかこの村を襲う。かの悪夢に誘われて…」 千寿はそう言うと、本堂へと戻っていった。その後ろ姿は全てを失った狩人<カリビト>のようだった。 季節外れの桜の花びらが、寺に舞った。
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