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その時、背後から強い気配がした。
嫌なほど嫌いな気配。庵奈はなぜかそれを知っていた。
振り返ると、彼女はいた。
「久々じゃのう。……全てを忘れてしもうたか」
彼女は無邪気に笑った。
それと同時に庵奈は全てを思い出した。
「あの…、あなたは誰ですか?」
「ほぅ。悪夢を呼び出した本人が妾を知らんとは…」
「えっ」
庵奈は黒子を睨み付けた。自分達を貶めた“悪夢”の指示者が、友人の黒子だとは思ってみなかった。
当本人の黒子は何が何だか分からず、目を丸くしていた。
それを見た妖姫は、口元を歪めて言った。
「あやつに記憶を抹消されたか! 実に愉快じゃのう……慶輔!」
「!!」
庵奈は慶輔を見た。
その時、本当に後悔した。今まで忘れておけば良かったと、本気で思った。
慶輔は笑っていた。
自分達が知っている慶輔ではなかった。
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