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あれはまだ五歳だった時だ。
夏のある赤口<シャッコウ>の日、妹の誕生日だった。誕生日祝いに、隣町のあるレストランへ行く予定だった。
いつものように隣町へと続く国道を車で、走っていた。
楽しそうな車内。とびっきりの笑顔。夢のような時間だった。
──そう。あの時までは。
カーブが続く山道を走っていた。その時、対向車線から一台のトラックが突っ込んできた。
視界は闇に覆われ、耳鳴りがするだけだった。
気がついた時は病院のベッドの中だった。
隣には医師が立っていた。僕は「家族は、どうしたんですか?」と聞いた。
その時、医師の顔が雲った。
……僕は理解した。 嗚呼、そうやって悲しそうな振りをする。
「……あなた以外は、即死でした。…悲しいと私達も思います」
…嗚呼、また情を売る。
全てが嫌になった。自分の生きる世界は、一体、どこにあるんだろう。
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