九話 終わり

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ズシン、 大きく地面は揺れた。地面に亀裂が入り、大地は盛り上がり、人々は物の下敷きになり死んで逝く。 バランスを崩した庵奈は、慶輔を放してしまった。そのまま、地面に尻もちをついた。 慶輔は一人、平気で立っている。 彼はこうなる事をわかっていた。封印の鎖が解けると、今まで止められていた栓が外れて、地震が起こることを。 「ふーん。彼もやるときはやるんだね、感心したよ。 ─さて、そろそろ潮時かな? 僕はこれから街へ出て、次なる悪夢へ行こう。 …ね、北尾千寿」 慶輔は遥か先に立つ、法衣を纏った千寿に笑いかけた。 彼は錫杖<シャクジョウ>を持ちながら、首にかかっている数珠を握りしめた。 その表情は悲しげで、どこか憐れみの色があった。 『この世に巣食らう、邪鬼他魔物…凶災を払わんとす』 「へぇ、僕にそんな術は聞かないよ」 『陽の力成りて、伊弉諾<イザナギ>の剣を持ちて、払わん。 我が名において、ここに称する』 錫杖が微かに揺れ始め、輝きだした。
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