九話 終わり

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慶輔は愉快そうに嗤った。それは勝ちを確信した笑みだった。 茂み、瓦礫、木々の奥から悪夢化した村人が這いずり出てきた。その数は十単位ではなく、百単位だった。 庵奈の後ろでは、黒子が半泣き状態になっていた。その悪夢の恐怖に気圧されてしまい、泣き始めてしまった。 「…庵奈君、黒子ちゃんをお願いするよ」 「あ…はい」 庵奈は黒子の手首を掴むと、村の外へと走っていった。所々地面がひび割れてしまい、走りにくかった。 ──それでも、庵奈は走った。 庵奈の姿が見えなくなると、千寿は向き直った。その瞳には強い光が、宿っていた。 首にかけていた数珠を外し、錫杖を持っている右手に巻きつけた。そして、左手の中指と人差し指を立てると、胸の前で星の印を結んだ。 『オン、』 その言葉に、錫杖と数珠が反応した。カタカタ、と錫杖が揺れ、数珠が光り輝く。
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