九話 終わり

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■終焉の後~Tha Last Banquet~ 通りゃんせ 通りゃんせ 闇の中で、歌が響く。その歌声はテノールより少し高い、男性の声である。 赤い衣を纏った黒髪の妖姫は、歌声に合わせて舞う。 蝶のように、花のように、優雅に舞う。 そして、歌声も妖姫も消える。 時は過ぎて、一年後。 東京から約300㎞離れた、小さな孤島──【亜帋島<アガミトウ>】 残暑厳しいと言われる今年の夏──島では夏祭りに向けて、着々と準備が進められていた。 冴えない、眼鏡をかけた中学二年生の敷崎 御春<シキザキ ミハル>は、一人海を眺めていた。 海の向こうから、知らない人間が来る。 御春は、それが怖かった。何か災厄をもたらすのではないか、それがとても不安だった。
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